南熱海のお寺でお香づくり――Circulation Life主催「南熱海くらしのDIYワークショップ」第1回レポート

2017年6月4日、南熱海・下多賀にある富西寺(ふさいじ)で、Circulation Life(サーキュレーションライフ)主催の初イベント「南熱海くらしのDIYワークショップ『天然香料を使った伝統的なお香 + 蚊取り線香」作り』」が開催されました。

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富西寺は、JR伊東線・網代駅から徒歩2~3分の、のどかな住宅街にあります。緑あふれる美しい庭と広い本堂を持つお寺です。

 

今回のワークショップでは、厳選された本物の天然香料を使って、古来から日本に伝わる「香りの文化」を学びました。

日本には世界でも類を見ないまで洗練され、脈々と受け継がれてきた「香りの文化」があります。和の香りのすばらしさを学び、伝統的なお香文化を生活に取り入れることは「粋な和のあるくらし」を愉しむことにつながります。

まずはお香に関する知識のレクチャーから。香十徳(こうじっとく/お香の10の効能のこと)と種類、基本となる五味(ごみ/味によって香りの相違を知るもの。辛・甘・酸・苦・鹹の5つの味)についてわかりやすく解説していただきました。続いて、仏教伝来に始まるお香の歴史を簡単に学びます。

 

さていよいよ、「お香(お線香)」作りがスタート。

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道具はすべて会場に揃っているので、筆記用具と持ち帰り用の容器を持参するだけでOK。

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お香のベースには、ゴージャスな香りを放つ「白檀(びゃくだん)」を使用しました。辛い、甘いなど、好みの香りに合わせて他のお香を加え、量を微調整。この世でひとつしかないお線香を作っていきます。

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水を少しずつ加え、乳鉢で練り上げます。乳棒で練り練りやっていると、だんだん無言になり次第に無の境地へ…。宇宙が見えてきます(すみません、幻でした)。

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練り上げたものが、まとまるようになったら注射器に入れてスティック状に押し出していきます。

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まっすぐ押し出すのはかなり難しい作業ですが、器用な方が多かったのか、みなさんとっても上手。三角コーン型にする人もいました。

 

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練ったお香を押し出します。やっぱり力仕事は男性陣!頼りになりますね。

 

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家族単位での参加者も多数。子どもたちが楽しそうに本堂の中で走り回っていました。
次は、天然材料を使っての「蚊取り線香」作り。

天然の原料除虫菊をベースに本物の香料を少量加えた粉のお香を使用。少しずつ水を加えて練り上げていきます。

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蚊取り線香型にする人もいれば、スティック状や三角コーン型にする人も。参加者それぞれが、自由に創作を楽しんでいました。

 

今回、指導してくださった先生は、薫物屋香楽公認香司 貴杏堂(ききょうどう)の宇野理佳さん。
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宇野さんは「日頃からぜひ、天然のものを身に着けて欲しい」と願っています。

「匂いの感覚は大切。子どもたちは、幼い頃に嗅いだ匂いに敏感に反応します。幼い頃から天然のものを身につけることは、脳にもいいと言われているのですよ」

各地域で開催される講座のほか、企業プレゼンテーション、町おこしなど様々なプロジェクトに参画。秩父で香司としてお香の伝承に力を注ぐほか、和ハーブインストラクター、JHSハーブインストラクター、古代文字気功治療師としても活動しています。

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「今日参加されたみなさんは自ら学ぼうという姿勢や、今日学んだことを自分の生活に取り入れていこうという熱心さがありますね。それに、男性の参加者が多かったことにも驚きました」

 

初めて出会った参加者ばかりのはずなのに、年齢性別関係なく、互いに協力し合って作業をしていることにも驚かれたそうです。参加者同士が教え合い、「ありがとう」という言葉が自然に交わされている場面も多く、和気あいあいとした雰囲気に包まれていました。

 

「自分の力で暮らしを良くしたい、自分たちに合う場所を自分でプロデュースしたいという気概のある人たちが多いと感じました。意識のレベルで同じ思いの方が集まっているんでしょうね」と宇野さんは分析します。

 

このワークショップをきっかけに、出来る限り自然のもの・天然のものを使いながら、自然と共存した生活をしていく人が増えていくといいですね。

 

Circulation Lifeのメンバーである中屋香織さんにもお話をお聞きしたところ、やはり同様に、男性の参加者が多かったことに驚かれていました。

「ご家族やご夫婦での参加が多かったこともうれしいですね。参加者には地元の方もいますが、首都圏から来てくださった方が多かったんですよ。初めて熱海に来たという方や、日帰りの方も泊りがけで来た方もいらっしゃいます」

首都圏と熱海を気軽に行き来する「首都圏型循環ライフ(Circulation Life)」の実践を提唱する彼女たちのメッセージが、ユーザーへ確実に届いたようです。

「南熱海の暮しに密着していて自宅に帰っても実践できるものがいいと思い、第一回でお香を取り上げることにしました。富西寺のご主人がこの企画にノリノリで、快く協力してくださったんですよ」と、中屋さん。

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お寺にはお葬式や法事、お墓参りで訪れるだけという方が多いのではないでしょうか。

お寺は宗教施設ですが、寺子屋が開かれていた時代から学びの場でもありました。また、地域の人々が集う場であり、情報の発信地でもあったのです。

今回のワークショップによって、その本来の機能を現代に取り戻しました。そんな演出も、Circulation Lifeの企画の優れた点のひとつなのではないでしょうか。

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初イベントは大成功に終わりましたが、彼女たちの活動はまだ始まったばかり。都会での暮らしに疲れたら、Circulation Lifeのイベントで熱海を満喫し、「自分らしさ」を取り戻してみませんか?

 
(取材・文:小林ノリコ/写真:田中洋二)
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小林ノリコ Noriko Kobayashi
田方郡函南町在住。東京・南青山の編集プロダクションで、大手週刊誌の音楽ページや音楽誌などの編集者として約5年在籍。Uターン帰郷後、静岡県東部・伊豆のグルメ・観光系書籍で取材・執筆・撮影に携わる。2015年から熱海市を拠点にフリーライターとして本格的に活動を開始。「あたみのつかいかた」では、自身のテーマでもある「新しいものと古き良きものの融合」「地域の宝の再発見」を軸に熱海の魅力を発信していきます。
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